「これまではアルツハイマー病と仮定して診察することもありました。今は以前より的確に治療ができています」(小澤さん)

 犬の場合、認知症の症状は明確だ。15~17歳で夜鳴きや徘徊、壁の前で立ち尽くすなどの現象が起きることがある。一方、も夜鳴きや徘徊はするが、甲状腺ホルモンが多くなる甲状腺機能亢進症など別の病気の可能性もあり、「猫は認知症発症率が低いと言われていますが、まだきちんと研究されておらず、症候論(医師が診断する際の判断基準)が確立されていないというのが現状です」(小澤さん)

 現在、認知症の特効薬はないが、症状の緩和や予防は可能だ。例えば、足腰が弱い犬には滑りにくい床を提供するなど、環境改善が一つの対策となる。

「7歳以上の犬猫は年に2回の健康診断が理想です。飼い主との会話の中で、認知症の疑いが発見されることも」(小澤さん)

●少しの工夫でストレス減

 また、脳の働きに良いとされる成分を含んだフードやサプリメントの摂取という方法もある。

 Meiji Seikaファルマの犬用栄養補助食品「メイベットDC」は、ここ15年間売り上げが一定だ。動薬飼料部の吉見泰さん(53)は、「数週間続けると夜鳴きが減ったという声も聞く」と言う。

 吉見さん宅にも最近まで老犬がいたそうだ。家具の配置換えなどを行って、隙間へ入り込まないよう対策をしていたという。また、数枚の風呂用マットで丸く囲いを作って、その中で老犬に安全に過ごしてもらう方法などもあるとアドバイスする。少しの工夫で人間も動物もストレスを少なく共生することが可能になる。(編集部・小野ヒデコ、朝日新聞sippo・藤村かおり)

AERA 2017年6月19日号