徹底的に話し合った。

「私が不安を言い募っても、マユミはいつも前向きで、『色々あるだろうけれど、私たちが愛して育てればまっすぐ育つよ』と言ってくれた。彼女とだったら、乗り越えていけるという気持ちになったんです」(同)

●自然の流れにまかせる

 妊娠計画を立て、職場の上司に報告した。「万が一迷惑をかけては」と退職を申し出たカナさんに、上司はこう言った。
「多様性を生きるあなたが、先生として向き合ってくれることは、子どもたちの宝になる。うちの園の子どもたちは幸せだね」

 カナさんはしみじみ言う。

「一人で悩んでいた時期が長くて、人を信じきれない部分があった。ありがたい言葉でした」

 理解あるドナーと巡り合い、2013年秋、カナさんが出産。2年後、同じドナーの精子提供を受け、マユミさんが出産した。それぞれ産休と育休を経て、現在は共働きだ。以前と同様、カナさんがバリバリ働き、マユミさんが子どもたちの保育園の送迎や食事の準備を多く分担している。2人ともが「母」だ。子どもたちの保育園の懇談会には、2人並んで出席する。

 事情は徐々に周囲に伝えているが、タイミングは自然の流れに任せている。保育園の先生には面談時に伝えた。保育園のママ友にも、尋ねられて答えた。マユミさんは、「聞いてくれる人は、すんなりわかってくれている」と感じている。

 一方で、傷ついた経験もある。妊娠中、マユミさんは産婦人科医に「倫理的に問題があるから、あなたは出産させられない」と言われた。

 1年半前、2人の子どもを病院に連れていったときは、年配の女性医師にこう迫られた。

「どっちがあなたの子どもなの? 本当のお母さんを連れて来てください!」

 子どもの世界は、成長とともに広がっていく。今はまだ、理解され守られて暮らしているが、小学校にあがったら、子ども同士の時間が増える。つらい思いをするかもしれない、と思う。

「『悪いことじゃないんだよ』『色々な選択肢があるんだよ』と教えてあげられたら。先に何が起こるかわからない。ひとつひとつ、乗り越えていくしかないんです」(マユミさん)

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