「リリー=ローズはまさにイサドラ・ダンカンそのものよ。歩いているだけでカリスマだし、努力しなくてもスターのオーラがある。私たちは前から知り合いで、共演は楽しかった。この映画で彼女は初めてキスシーンを撮ったんだけど、それを奪ったのは私なのよ(笑)」

 ステファニー監督は言う。

「ロイはイサドラと出会ったあと踊りをやめて、映画を撮る道へ進みます。でも私はイサドラの存在をネガティブには捉えたくなかった。彼女がいたからこそ、ロイは観客の前に自分をさらけ出すことができた。自分が同性愛者であると認めるきっかけにもなった。ロイは彼女のおかげで自分の肉体と精神に向かい合うことができたんです」

 映画には描かれなかったが、ロイは彼女を見守り続ける女性マネジャーのガブリエルと生涯をともにしたという。なによりロイは強く、常に自由であろうとした女性だ。ダンサーであり演出家であり、実業家でもあった。ソーコは言う。

「私がイサドラタイプかロイタイプかって? 完全にロイよ!私は超仕事人間で私生活はほとんどない。結婚もしていないし、仕事の奴隷よ。でもそんな生き方を自分では気に入ってる。マドンナから『映画を観たわよ』と電話をもらったんだけど、彼女も『ロイってまったく私だわ!』って言ってた(笑)」

(ライター・中村千晶)

AERA 2017年6月12日号