トランプ氏の関与があったのか、それとも側近が勝手に動いただけなのか。事実関係は何も分かっていないロシアゲートだけに、捜査を一任されたマラー特別検察官の役割は重い。水面下の捜査でFBIがどこまで解明できていたのかも不明で、コミー氏が出席するという今後の議会証言にも注目が集まる。

 その一方で、特別検察官は事実の解明はできるが、大統領を解任することはできない。それができるのは議会だけだ。上院での弾劾裁判で3分の2の賛成があれば弾劾が決定し、大統領は罷免(ひめん)される。その前に下院での過半数の賛成で訴追されて初めて、上院での弾劾裁判を起こすことができる。もちろん、訴追には具体的な罪の存在が必要だ。現時点では、疑惑への関与がはっきりしないトランプ氏の訴追は難しい。今後可能性が出てくるとすれば、フリン氏への捜査をコミー氏に打ち切るように要請したとされる捜査妨害や、その事実を隠したことなどによる偽証が考えられる。

●カギ握る共和党執行部

 大統領弾劾の難しさは、90年代後半にあったクリントン大統領の弾劾裁判を見れば明らかだ。当時の議会は、共和党が上下両院で過半数を占め、民主党の大統領を弾劾するには優位な議会構成だった。それでも上院で3分の2の賛成は得られず、クリントン氏は弾劾を免れている。

 トランプ氏の場合、上下両院で過半数を占めるのは、自身が属する共和党だ。自党の大統領を罷免するためのプロセスで、下院では過半数、上院では3分の2の賛成票を引き出すには、極めて高度な政治判断が必要になる。来年の中間選挙で上下両院の過半数を維持するだけの勝利を得るには、何が最善かという判断だ。

 今のところ共和党主流派は、トランプ大統領では中間選挙に勝てないという結論を出していない。米ギャラップ社の世論調査では、5月30日のトランプ氏の支持率は41%となっており、就任以降ずっと40%前後の低い支持率で推移している同氏にとっては平均値の範囲内だ。5月13~24日は30%台後半で推移していたことを考えると、徐々に回復傾向にあるとも言える。

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