釈迦三尊像にも超越がある。鋳造後、加工前の釈迦三尊像は、1400年前、完成直後にそうであったろう金色に輝く姿を現した。展示では、2メートルの至近距離で全方位からの鑑賞が可能になった。

 現在は、失われていた大光背部の飛天を同時代の作例から3Dで復元し、再現中だという。

 さらに、東京芸大COI拠点は、観光客の増加で劣化に悩む世界遺産の中国・敦煌莫高窟とも協定を結んだ。

「莫高窟の壁画のない洞窟に仏像の塑像と壁画のクローン文化財を作り、時代ごとに復元して展示することも可能です。活用法は無限にあります」(宮廻教授)

 経済効果も大いに期待できるが、宮廻教授は、最終目標は「人材育成」と語る。

「制作過程で特許を取ったのは、この技術を守るためでもある。各国の人に正確な技術を教え、自国の文化を自国の人々が守り、継承できるようになってくれれば」

 テロに屈せず、時間にもとらわれない。芸術と密に触れ合う試みが、始まっている。(編集部・澤志保)

AERA 2017年6月5日号