森村学園/所在地:神奈川・横浜。12年から欧米の母語教育「ランゲージ・アーツ(言語技術)」を正課に導入。「聞く・話す・読む・書く」の4技能をバランスよく学んで思考力・論理力を育て、議論や交渉のスキルを高める。マルタ島でのグローバル研修等でその成果を生かす(撮影/柿崎明子)
森村学園/所在地:神奈川・横浜。12年から欧米の母語教育「ランゲージ・アーツ(言語技術)」を正課に導入。「聞く・話す・読む・書く」の4技能をバランスよく学んで思考力・論理力を育て、議論や交渉のスキルを高める。マルタ島でのグローバル研修等でその成果を生かす(撮影/柿崎明子)

 2030年。あなたの子どもは何歳だろうか。ちょうどこの頃、社会の中核を担うのは今の中高生だ。AI(人工知能)の進化で仕事も働き方も急速に変わり始めた。変化の加速度を考えると、学校選びの基準もこれまでと大きく違ってくる。もう「教育改革」など待っていては、わが子の成長に間に合わない。AERA 2017年6月5日号では、「AI時代に強い中高一貫・高校選び」を大特集。アエラが注目する中高一貫校・高校の中から、森村学園を紹介する。

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 国や文化を超えた協働に必要なのは語学力だけではない。森村学園は欧米の母語学習法を導入。対等に渡り合えるような「言語技術(ランゲージ・アーツ)」の習得を目指す。

 子狐ごんと村人の兵十の切ない触れあいを描いた「ごんぎつね」。小学4年の国語の教科書に採択されている物語だが、森村学園の中学2年生の授業では、この物語の「構造」を読み解いていた。

 構造とは何か。例えば、花村哲男教諭が黒板になだらかな坂道の図を描き「冒頭」「発端」「山場の始まり」「クライマックス」などと書き入れる。クライマックスの頂上からがけのように下ったところに「結末」がある。この流れの要所ごとに、花村教諭が生徒へ次々と問いを投げかける。

「主人公のごんの特徴は?」「栗を置いたのを神様の仕業だと思われて、ごんはどう思った?」「ごんの気持ちは、どんなふうに変わった?」

●物語分析や問答ゲーム

 生徒も果敢に答える。この過程で、両者の視点の違いに着目し、この相違が悲しい結末を生んでしまったことを認識するというわけだ。授業の終わり、花村教諭はこう結んだ。

「一見易しそうに見える物語でも、視点を変え二重構造で読むと深みが出るのがわかったね」

 この授業は同校の特徴でもある「言語技術」の一環。12年から正規カリキュラムとして取り入れ、中1から中3まで週に1時間学んでいる。

 言語技術は、欧州を中心に欧米諸国で実践されている母語教育。中高生時代にドイツに在住した、つくば言語技術教育研究所の三森ゆりか所長が国語教育の差異を痛感し、日本での普及に尽力。同校もいち早く採用した。

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