出口汪(でぐち・ひろし)/現代文講師として入試問題を「論理」で読解するスタイルに先鞭をつけた。論理力養成のために開発した「論理エンジン」が全国の学校で採用。キッズ版も刊行
出口汪(でぐち・ひろし)/現代文講師として入試問題を「論理」で読解するスタイルに先鞭をつけた。論理力養成のために開発した「論理エンジン」が全国の学校で採用。キッズ版も刊行

 2030年。あなたの子どもは何歳だろうか。ちょうどこの頃、社会の中核を担うのは今の中高生だ。AI(人工知能)の進化で仕事も働き方も急速に変わり始めた。変化の加速度を考えると、学校選びの基準もこれまでと大きく違ってくる。もう「教育改革」など待っていては、わが子の成長に間に合わない。AERA 2017年6月5日号では、「AI時代に強い中高一貫・高校選び」を大特集。カリスマ予備校講師・出口汪さんが“倫理”について語ってくださった。

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 これからの子どもたちに必要となる「論理」は、従来型の国語教育では身につきません。なぜなら、これまでの国語は「文学鑑賞」でしかなかったからです。本を読むことばかりが推奨され、どのように文章を読み、どう考えてどのように表現するか、教えられていません。

 欧米で、クリティカルシンキング(批判的思考)が成り立つのは、論理を幼い頃から訓練しているから。日本と決定的に違うのは他者意識です。多様な人種、文化が混在する欧米では、他者にはきちんと言葉で説明しなければ理解してもらえないことを肌で感じています。言葉を、他者に物事を伝えるための「技術」ととらえ、使い方についての共通のルール=論理を子どもの時から学んでいるのです。

 一方、日本では、論理を小さい子に教えるのは難しいとされてきました。しかも子どもたちは家庭でも学校でも同質性が高く、「察する」文化の中で育っています。周囲が察してくれて、説明する必要がないので、言葉をどんどん省略します。つまり身内を意識すると言葉は省略に向かい、他者を意識すると論理に向かうのです。

 筋道を立てて読み、考え、話せるようになるためには、たとえ親子でも、理由をきちんと言うこと。単語でしゃべらない。主語と述語を意識し、接続語を自在に使いこなすという積み重ねが必要です。

 そもそも論理とは何なのか、親自身もきちんと習ってきていません。子どもに論理的になってほしいなら、まず親が子ども向けに論理を教える教材で勉強し、そこから親子でぜひ一緒に学んでください。

AERA 2017年6月5日号