受験に受かるためだけのスキルではなく、いろいろな人がいる社会、正解のない社会で生きていくツール。それがロジムで教えたいロジカルシンキングだ。

「探究型学習」の塾は、どんなことをやっているのか。東京・本郷にあるa.schoolを訪ねた。学年も学校もバラバラという中高生男女9人が、5月から取り組んでいるミッションは「自分の嫌いな科目を楽しく学べる学びのキットを開発せよ」。

 この日は、各自が自分の苦手な科目を言い合った後、市販の学習キットで実際に遊んでみた。あるチームは、小学生に大人気の「うんこ漢字ドリル」で大爆笑。別のチームは工作系のキットに夢中で取り組み、それぞれ、商品の何がどう面白いかについて分析した。

●本気で作って売る

 次回からは教材を開発している企業の担当者をゲストに迎えて議論し、実際の企画を練り上げていく。議論→試作→プレゼン→議論という企業の新商品開発と同じプロセスを体験する。

「ワクワクを大切にしながら、本気でやること」

 それがこの探究プログラムのミソだと岩田拓真校長は話す。本気というのは机上の空論で終わらせず、きちんと成果物にするという意味だ。これまでも「街の探究」では街についてのカードゲームを、「サイエンスとビジネス」では発電のことを学べるキットを作って実際に販売。一つ500円で1万円以上売り上げた。「LGBTを発信する」では動画を制作した。

 ターゲットは誰なのか。会ったこともないお客さんが、手に取るまでには何が必要か。徹底的に話し合う。「お金を稼ぐって難しい」と何度もため息が出るが、自分たちが生んだ価値が「売れる」という目に見える形で評価される喜びは格別だ。

「学校では先生が教える人、生徒は聞く人と決まっている。それがすごく嫌なんだけど、ここは自分たちでチャレンジができるのが超楽しい」

 千葉県から通う高1の女子生徒はそう言って目を輝かす。

「将来自分はどんな仕事をしたいのか。ヒントを探すために通っている」

 そう話す都内公立中3年の男子は、仲間の思いがけない発想に驚いたり、最先端のビジネスパーソンから直接話を聞けたりする醍醐味(だいごみ)を熱く語ってくれた。こうした取り組みが一部の塾でしかできないのはなんとも歯がゆい。岩田さんは今後、学校現場にもノウハウを広げていく計画だという。(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年6月5日