「どなたにもメリットがある仕組みをと考えました。オーナーにとっては、追加設備が不要で、広告費がいらず、問い合わせが倍増する。利用者はネコとの暮らしを楽しめます」

 月1回、付きの物件についての勉強会を開催し、多いときには20人ほどが参加する。その8、9割がオーナーで、残りが利用希望者や不動産業者、ディベロッパー。関東圏のみで展開しているが、今後全国に広げていきたいという。

 立体駐車場の屋上に広がる1千平方メートルを超える広々とした空間。そのあちこちにハーブが植えられ、エディブルフラワー(食用花)などの花が咲き乱れている。

●ハーブでイベント企画

「住民は自由に入って収穫ができるんです。シソやミツバも植えているので、夕飯前に取っていく人も多いです。こういう場所で過ごせるのは幸せですね」

 川崎市にある分譲マンション「ザ・クレストシティ」。管理組合理事長の齋藤秀雄さん(60)は満足げにこう話す。

 04年に分譲を開始したマンションで、植栽のある憩いの場として作られた屋上のスペース。年数がたち管理が行き届かずに荒れていたのを、管理組合で話し合い、管理会社の協力を得て16年にハーブ園に整備し直した。ハーブの植え付け、ハーブを使った料理教室など、年に3回ほどイベントを企画。総戸数626戸のマンションで、イベントによっては200人もの住民が集まるというから驚きだ。

「防災や防犯まで考えたときに、日ごろから住民同士でコミュニケーションをどのくらい取っておくかが重要になる。そのための一つの方法として、共用部に皆が使えて運営にも参加できるものをつくりたいと考えたんです。住民同士で手を取り合って何かを楽しむことで、満たされる部分があるし、マンションへの愛着も生まれる」(齋藤さん)

 ハーブ園の整備を手掛け、その後の管理も委託されているのがマンションの植栽管理を手掛ける東邦レオ(東京都豊島区)。共用部の緑を充実させ物件をより魅力あるものにすることで、高齢化の進みがちなマンションにも若い入居者を呼び込めると、植栽管理のレベルアップを積極的に提案している。担当している田中尚吾さん(30)は、こう話す。

「目指しているのは緑を媒介にしたコミュニティーづくり。昔は家の縁側とか井戸端といったコミュニケーションをとる場がありました。これからはマンションの共用部にそういう機能が求められると思っています」

 さまざまな魅力のある物件が増え、マンション市場がよりどりみどりになる日も近い。

(編集部・山口亮子)

AERA 2017年5月29日号