皇族として天皇の立場を考えれば、特例法成立前は動きづらい。現天皇が退位し、新天皇即位後になってしまえば、女性宮家問題も否応なしに再注目されることになる。

「内親王にかかるしがらみが強まる可能性があったのでは」(小田部教授)

 事実、婚約準備発表後、新聞各紙は女性宮家問題を取り上げ、女系天皇や旧宮家の皇籍復帰などを論じる識者らの談話も紹介している。

 しかし、こうした議論に、「違和感を覚える」と原教授は言う。

「女性宮家賛成派も反対派も、女性皇族が子どもを産むことを前提に議論しています。だが、子どもを産むか否かは個人の尊厳であり、国民や政府がとやかく言う問題ではありません。本人の意思を尊重しての婚約発表であったはず。大前提の当事者の意向を無視してよいのか」

 小田部教授も言う。

皇室はいまだに明治時代につくられた旧皇室典範に縛られている部分もあります。旧典範同様、現典範も皇統に男系男子の継承を定めている以上、『男児を産むべし』という圧力が皇族の女性にかかる。天皇制が国家の問題であるとしても、極めて前近代的であると言わざるを得ません。公的性格が大きいとはいえ、皇族も人間であり、自由を享受する権利がある。ご婚約を通じ、それを正当に主張されたのだと思います」

 婚約は、秋篠宮ご夫妻ならび天皇、皇后両陛下も認め、二人の意思を尊重したものだという。

 19日午前、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」が閣議決定された。今期の国会で成立する見通しで、女性宮家については、付帯決議での扱いが焦点になるとみられる。

(編集部・澤志保)

AERA 2017年5月29日号