ベルギーリーグは組織プレーよりも個人技に重きが置かれているとされ、一般的にレベルは強豪と言われるスペインやイングランド、イタリアやドイツほど高くないと言われる。しかし、ベルギーで久保について聞けば、クラブ関係者から地元メディアまで称賛の声ばかりである。

●安泰と考えていない

「シーズン途中での加入だったが、スイスで3年半プレーしていたことが影響しているのか、スムーズにチームに適応してくれた。ユウヤはメンタルが強いだけでなく、クレバーで、球際に強く、フィニッシュもうまい。すでに多くのゴールを決めているが、さらに成長できると確信しているし、1、2年後が楽しみだ」(ゲントのハイン・ファンハーゼブルック監督)

「チャンスを最大限に生かすにはどうしたらいいかがわかっているようで、ボールを力任せに蹴ることもなく、重要な場面で難なくゴールを挙げている。空いたスペースを察知する能力はもちろん、ボールタッチにも優れ、点を取るだけじゃなく、チャンスメイクもできる。ゲントがクラブ史上最高額の350万ユーロ(約4億2千万円)の移籍金を払って獲得したと聞いたときは、正直疑問に感じたが、今では大金をかけた甲斐があったと思っている」(地元ベルギーのスポーツ記者フレデニック・ヴァンヘウレ氏)

 6月に再開するW杯アジア最終予選でもゴールが期待される久保。だが、周囲の喧騒をよそに本人は謙虚な姿勢を崩さない。

「今後も代表に絡めるという自信は得られましたが、安泰だとかは考えていません。これを継続していくことが大事」

 久保はマンネリ化や世代交代が叫ばれ続けるハリル・ジャパンの救世主となり得るのか。このまま一気に真のエースになったとしても驚きではない。(スポーツジャーナリスト・栗原正夫)

AERA 2017年5月29日号