●建てては壊す発想

 都内にある築40年のマンションは、複雑な権利関係から、さらに厄介な問題を抱えていた。12階建てで、3階から上は住居部分だが、1階と2階は元の地主が所有し居酒屋などのテナントが入っている。住居部分には管理組合もあり、テナント部分は地主が法人を作って管理していた。が、バブルがはじけて法人が破綻、管理費や修繕積立金を払わなくなった。

 今、マンションの外壁にはひびが入り給水管も取り換えないといけない。全体を補修するには総額4億円近く必要だが、管理組合には1億円ほどしか修繕積立金はない。何とかしたいと思い、数年前に弁護士まで入れて話し合いをしたが決裂。以降、元地主は交渉のテーブルに乗ってこないという。このマンション関係者は頭を抱える。

「もう、打つ手がない」

 限界マンションについて、先の米山さんは日本におけるマンション事情の特殊性があると指摘する。

「日本のマンションの寿命が短いのは、初期のマンションは、粗悪な耐久性に劣るコンクリートが使われたのが一つ。あと一つは、日本の建設業界全体は長い間、マンションに限らず、耐久性に十分配慮して長く使うという発想には立たず、建てては壊すというスクラップアンドビルドの発想に立ち建築物を造ってきたのが原因。そのほうが、仕事がなくならず、建設業界にとって好都合だったからです」

●住民合意の難しさ

 マンションの再生には、解体して建て替えるという選択があるが、実現には様々なハードルがある。16年4月時点で、建て替えを終えた分譲マンションは、全国でたった227。最大の理由が住民合意の難しさだ。

 マンションは、住宅の中でも区分所有者による共有という特殊な所有形態をとる。建て替えには、全住民(区分所有者)の5分の4以上の賛成が必要だが、価値観や経済状況、世代の異なる住民の意見をまとめるのは容易ではない。

 沖縄県浦添市の住宅地にあるマンションは、その一例だ。

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