ところが、3年前に1級建築士がコンサルに選ばれて事態は悪化する。営々と積み立てた修繕資金が、必要性の乏しい塗装工事で食いつぶされた。地震に備えて耐震補強に使うはずの費用が消し飛んだ。

 不審に思った住民のAさんが誰の紹介でコンサルが入ったのかと理事長にただすと「京滋管対協です」。Aさんが京滋管対協に確認をとると「そんな人は紹介していません」と返答された。じつは、ある理事の親族がこの1級建築士と仕事上の関係があり、引き入れたのだった。Aさんが言う。

「嘘はいけない。考えたくないけど裏があるのでは、と。うちは新耐震基準を満たしていないので耐震補強をしないと資産価値も下がる。ことの重大さにやっと理事会も気づきました」

●国土交通省が動く

 悪質コンサルのリベート問題は根が深い。改修業界の競争の激しさとマンション住民の関心の薄さとのギャップが、根底に横たわる。リベートが住民に損失を与えるのは明らかだが、業界のグレーゾーン、ときには「共存共栄の必要悪」と言われて長年、放置されてきた。

 流れが変わったのは昨年11月、一般社団法人マンションリフォーム技術協会が「不適切コンサルタント問題への提言」を会員誌に掲載してからだ。この提言は、悪質コンサルが通常の半額から3分の1の委託料で請け負っても「工事費の3%のバックマージンがあれば十分おつりが来る」と記す。このままでは「マンション改修業界全体の信用が失われる」と警鐘を鳴らした。

 提言の後、国土交通省は前例がないほどすばやく動いた。今年の1月27日、関係団体へ「設計コンサルタントを活用した大規模修繕工事の発注」に関する通達を出す。国交省は悪質コンサルの事例を明記し、管理組合に公的な相談窓口(公益財団法人マンション管理センターなど)を活用するよう呼びかけた。

 関係諸団体もMKSに事務局を置き、横断的な協議会を発足させ、4月25日に第1回の会合を開いた。MKSの中野谷常務理事は、こう述べる。

「大規模修繕に関する業務と報酬の適正な基準が必要でしょう。基準を示せば、管理組合の方々も発注しやすくなる。改修分野の設計事務所には団体を設立して襟を正していただきたい」

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