“面接ブッチ”の関門をくぐり抜けて内定を出しても、研修の初日の午前中でフェードアウトした社員もいた。よく聞く“理由”が「親や親戚が、倒れた、死んだ」というものだと言う。

「ちゃんと計算して採用して、社会保険などの手続きをしているのに大迷惑ですよ」(奥田さん)

●就活サイトの功罪

 転職サイトを運営する人材会社の担当者曰く、同様に企業側から悲鳴が上がっているという。「内定後、初出社日に大遅刻」「WEB履歴書にピースサインをした写真を登録」「根拠なく希望年収が高い」など、一見非常識な若者が増えているように見えるが……。

 武庫川女子大学教育研究所の調査「4年制大学への進学率と18歳人口の推移」によると、18歳の人口は1992年以降減少していく一方で、4年制大学への進学率は右肩上がりとなっている。エン・ジャパンの「エン転職」編集長の岡田康豊さん(40)は、大学進学率と就職率の上昇が関係すると考察する。

「いつの時代も“今の若いものは”というように、今に限ったことではなく、全体数が増えたため目立ってしまうのではないでしょうか」

 大学の就職活動では、就活サイトで数十社エントリーするのが主流だ。その名残でやりたいことが明確ではなくても、転職先として興味がある企業に応募するという傾向がある。機械的にダイレクトメールが大量に届くため、自ずと企業と応募者の関係性は希薄化する。“見られている”という感覚が持てないことが、面接などを簡単に断っても問題はないという思考につながっているのではと奥田さんは分析する。

「デジタルネイティブ世代のため、狭い中でコミュニケーションをしている影響はあると思います。自分の言動の影響を想像する力が多少不足しているかもしれません」

●既存スキルだけでなく

 企業側もただ手をこまぬいているわけではない。就職情報会社、学情の20代の転職に特化したRe就活プロジェクト担当兼人材紹介事業部ゼネラルマネージャーの渡邊弘基さん(40)によると、電話に出なかったり、メールの返信が遅かったりする若者も多いという。その対策として、若者になじみのあるLINEの有料版でセキュリティー強化が特徴的な「LINE WORKS」というサービスを今月から導入し、求職者とのやりとりをしている。パソナキャリアカンパニー営業カウンセリング2チーム長の山崎将吾さん(32)はこう言う。

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