一方で、メディアはキャサリン妃をことあるごとに元妃と比較してきた。昨年、妃はファッション誌「ヴォーグ」(イギリス版)の100周年記念号の表紙を飾った。カジュアルでシンプルなスタイルが美しさを際立たせていると称賛されたが、さっそく持ち出されたのは、1991年の元妃による同じ雑誌の表紙。「自信に満ちあふれた新しいダイアナがここにいる」と大評判だったものだ。「キャサリン妃は元妃と比べるとかなり退屈」「ダイアナさんのカリスマ性には、しょせんかなわない」と書きたてられた。

●元妃との最大の違いは

 何を着ても、何をしても元妃と比べられる。キャサリン妃が一般の人たちと握手をしたり子どもたちと言葉を交わしたりすると決まって「ダイアナさんはもっと自然に触れ合った」「キャサリン妃はわざとらしい」と言われる。

 しかしキャサリン妃は、元妃と競わない。むしろ夫の母への思いを一心にサポートする。ジョージ王子を出産して退院する時は水玉模様のワンピースをまとって、元妃のウィリアム王子出産後の退院時の服装とそっくりにした。義母に敬意を示して「永遠に勝てない嫁」「夫と共に追慕する嫁」の姿勢を貫き、間違っても夫のマザコンぶりを非難するような言動はしない。

 3月半ばにウィリアム王子は男友だちとスイスにスキー旅行に行き、昼間からモデルらと酒を飲んだり、ナイトクラブで上手とは言えないダンスを披露したりした。動画が出回った直後に公務でパリを訪問した夫妻に好奇の目が集まった。王子はバツの悪そうな表情を浮かべたが、キャサリン妃はいつも以上に笑顔を夫に向け、窮地を救った。

 元妃との最大の違いは夫との仲の良さだ。これだけは元妃に絶対に負けない。ここさえ押さえれば、他は瑣末なこととキャサリン妃は心得る。王室で生き抜く妃のしたたかで賢明な覚悟は、もうとっくにできているのだ。

(フリージャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2017年5月22日号

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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