フランス大統領選の本当の勝者とは(※写真はイメージ)
フランス大統領選の本当の勝者とは(※写真はイメージ)

 仏大統領選で有権者が選んだのは、同国史上最年少の大統領となる元銀行員。背景にあるのはやはり、昨年から続く世界的傾向だ。「トランプ化」はまだ続いている。

 欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に進む英国のように「フレグジット」を主張し、トランプ大統領の代名詞とも言える「自国第一主義」を訴えた極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首(48)が、全く正反対の主張を貫いた相手に敗れたことで、「ポピュリズムには一定の歯止めがかかった」との見方が多く出た。

 果たしてそうだろうか。

 日本総合研究所会長の寺島実郎氏は「それは表層的な見方だ」と指摘する。

 39歳の無所属エマニュエル・マクロン氏を大統領に選んだフランス国民の選択はデジャブ。まるで昨年11月の米国大統領選を見ているかのようだった。

●マネーゲームと格差

 時代の流れに沿って確立された既存体制や既成概念への強い反発から、政治手腕が未知数で「泡沫(ほうまつ)候補」でしかなかった人物に「変化」の期待を託すという有権者の意識は、米国同様に仏大統領選の結果も左右した。

 ブレグジットやトランプ大統領の路線の継承を強く訴える極右政党がオランダやフランス、ドイツなど、今年国政選挙がある国で存在感を示し始めた結果、「極右=ポピュリズム」という印象が深まったが、ブレグジットから始まった一連の「世界秩序の変化」の根っこにあるのは、世界の極右化を求める声ではなく、既存体制への抵抗やグローバリズムへの反発だ。

 寺島氏が解説する。

「国境を超えた視点で地球を一つの共同体とする『グローバリズム』は、国と国との相関性を探求しながらもあくまで国家を前提とした『インターナショナリズム(国際主義)』に代わって出てきた価値観だ。冷戦終結で東西の壁がなくなった1990年代以降の約10年間は、ヒト、モノ、カネ、技術、情報などの移動がより自由に行き交うことで、世界でグローバリズムの潮流が一段と進んでいく、と楽観されていた」

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