「ある意味、今回のことで日本の識者やメディアが、どのような反応を見せるのか、シミュレートされたと思います。」(※写真はイメージ)
「ある意味、今回のことで日本の識者やメディアが、どのような反応を見せるのか、シミュレートされたと思います。」(※写真はイメージ)

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 朝鮮人民軍が創建85周年を迎えた4月25日。日本は、非常事態がいつ起きても不思議ではないという報道や言説がメディアを通じて流され、まるで「開戦前夜」のような異様な空気に包まれました。しかし、冷静に考えてみれば韓国大統領選挙は目前でしたし、北朝鮮とある意味で平和的な交渉を考えている文在寅(ムンジェイン)氏が最有力候補だったことをみても、選挙前に北朝鮮が自分たちに不利な選挙結果になりかねない決定的な挑発をするとは考えられないはずです。日本でも、安倍首相の外遊は予定通りという発表が一番の危機とされた25日にされているのですから、報道各社が外遊日程を見極めれば、今回のことがある種のマヌーバー(策略)に近かったということがわかったはずでした。

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姜尚中

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

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