介護付き有料老人ホーム、SOMPOケア ラヴィーレ鷺ノ宮(東京都練馬区)を訪ねた。92人の入居者のうち、認知症があり排泄の意思を伝えることが難しい人などを中心に19人がDFreeを利用している。

 仕組みはこうだ。下腹部に、3×5センチほどの大きさの超音波センサーを貼り付ける。センサーが膀胱内の尿量を読み取り、ケーブルでつながった本体部からその情報を無線で飛ばす。データを受信したタブレットのアプリは、尿量の変化を表示する。排泄して膀胱内が空になれば、グラフががくんと下がる。排尿パターンのデータが蓄積すれば、「いつ出るか」の予測も可能になるというわけだ。

 SOMPOケア ラヴィーレでは各フロアに職員が参照するiPadを設置している。iPad上でDFreeのアプリを開くと、DFree使用中の人の膀胱内の尿量が一覧できる。同ホームのケアトレーナー、白石陽子さん(41)が説明する。

「排泄のタイミングは人それぞれ異なりますが、定時に排泄介助に入るのが介護業界では一般的でした。トイレに案内しても排泄できずに空振りすることが多い一方で、トイレでする能力がある方でも、適切な時間に介助に入れず間に合わないことがあった。DFreeのデータをもとに、個人に合わせた適切な時間に案内できるようになりました」

 パッドの使用枚数が月に200枚から70、80枚ほどに減った例もあるという。

●オムツは最終手段

 また、すでに排尿があった場合は、グラフの変化から「排尿したかもしれません」という通知が表示される。

 すぐにパッドを交換できて不衛生な状態で待つ時間が減り、横漏れや肌トラブルの予防にもつながるという。

 同ホームを運営するSOMPOケアネクストのマーケティング部部長松澤豊さん(44)が言う。

「私たちが掲げている目標のひとつに“オムツゼロ”があります。排泄の予測は、これまで経験を積んだスタッフの職人的な感覚に頼るしかなかった。DFreeはそれを補ってくれるもの。人材不足が続く介護業界で、質の高いサービスを続ける一手になる」

 昨夏に、トリプル・ダブリュー、伊藤忠テクノソリューションズとともに実証実験を行い、今年4月から本格導入。今後全施設での導入を目指すという。

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