「働かない=無収入という最悪の事態を見越してマネープランを立てておけば、少しでも働けるようになるともっと安心できる」と訴える。

 ひきこもりの姉(52)をもつ木村一恵さん(仮名、40代半ば)にも話を聞いた。2年前に母が亡くなり、父と姉は2人で暮らす。

「てきぱきと何でもこなす母の下で姉はほとんど何もせずに30年間ひきこもっていた。でも母が病気がちになってから母に頼まれて近所に買い物に行けるようになった」と木村さんは話す。

 今はご飯を炊いたり味噌汁も作ったりするし、美容院にも行くようになった。木村さんがときどき通って掃除したり話し相手になったりして、穏やかな日々を送っているという。「ひきこもりだから何もできない」と決めつけ、腫れ物にさわるように接するのでなく、役割を与えて任せることで少しでも社会に出る可能性を開くことはできるのかもしれない。(ライター・加納美紀)

AERA 2017年5月15日号