本誌デスクの使い込まれたyPad。だいたい半年に1冊のペースで使う。ステッカーやテープで補強していくうちに愛着がわく(撮影/写真部・岸本絢)
本誌デスクの使い込まれたyPad。だいたい半年に1冊のペースで使う。ステッカーやテープで補強していくうちに愛着がわく(撮影/写真部・岸本絢)
寄藤文平さん/「yPad」考案者/1973年長野県生まれ。グラフィックデザイナー。著書に『死にカタログ』『地震イツモノート』『元素生活』『ラクガキ・マスター』など(撮影/写真部・岸本絢)
寄藤文平さん/「yPad」考案者/1973年長野県生まれ。グラフィックデザイナー。著書に『死にカタログ』『地震イツモノート』『元素生活』『ラクガキ・マスター』など(撮影/写真部・岸本絢)

 1枚で2週間の時間割や仕事の流れが一度に見渡せる「yPad」(朝日新聞出版)。考案者である寄藤文平さんに「yPad」の誕生秘話を聞いた。

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 yPad誕生以前に、「文平銀座計画表」というシートを作っていました。15年ほど前、仕事の案件数が40個くらいになり、わけがわからなくなったことがありました。もともとスケジュール管理が苦手だったこともあり、どうにかしなければと思ってこれを作り、スタッフと共有しました。グーグルカレンダーが始まるより前です。これを書いて自分がどういう状況かを把握し、整理することで落ち着く。手帳は普通、日付という「区切り」で区切られるので、「流れ」を見渡すためのものがない。ちょうどiPadの日本上陸という話題もあったので、それにぶつけてちょっと面白おかしいネーミングにして、2010年に誕生しました。

 反響はとても大きかったです。ちょうどSNSが普及するタイミングだったので、学校の先生がとても便利に使っているという感想や、自分なりの使い方をツイートしてくれたりしました。

●書き、整理し、把握

 yPadも7年目に入り、yPad Proも出て完成形になりました。今でも忙しくなると、yPadを広げます。その人の時間をその人のものにするためのツールがyPadだとしたら、次の段階として、自分の考え方や断片的なものをよりあわせて一つの世界にするためのツールを考えています。

 今は名刺大のカードも使っています。「これ」と決めた本はカードにメモを取りながら読んでいます。このカードをデータ化しています。

 道具と人の関係は、道具によって思考の枠組みが作り出されるという部分があると思います。紙やコンピューター、スマホなど、人間はいろいろな道具を経験してきていますが、手で書くことによって自分の中で整理できる、それによって把握しておくことができる、そのことで時間がトータルで短縮されるということはあると思います。

 コンピューターはインプットツールですが、yPadはアウトプットツール。これは自分のもの、というリアリティーがあるんです。(談)

AERA 2017年4月3日号