将棋界の暗雲を吹き飛ばすこの衝撃波、発信源はインターネットテレビだった(※写真はイメージ)
将棋界の暗雲を吹き飛ばすこの衝撃波、発信源はインターネットテレビだった(※写真はイメージ)

 プロになりたての14歳、藤井聡太四段が羽生善治三冠に勝利した。将棋界の暗雲を吹き飛ばすこの衝撃波、発信源はインターネットテレビだった。

 プロになりたての藤井聡太四段(14)が羽生善治三冠(46)に勝利した報は、瞬く間に全国を駆け巡った。羽生三冠だけではない。あどけない学生服姿の中学生が、将棋界ナンバーワンを含めたトップ棋士7人を6勝1敗と圧倒した。

 この7番勝負を実現させたのは、昨春開局したばかりのAbemaTV。サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資して作ったインターネットテレビ局だった。

●ガチンコで強い相手と

 今年2月に開設した将棋専門チャンネルの目玉企画「炎の七番勝負」がそれ。非公式戦ながら、日本将棋連盟が全面協力。2016年新人王の増田康宏四段(19)、同年棋聖戦に挑戦した永瀬拓矢六段(24)、16年度勝率1位の斎藤慎太郎七段(24)、安定感抜群の中村太地六段(28)、A級在位中で元王位の深浦康市九段(45)、元名人で連盟会長の佐藤康光九段(47)、そして「史上最強」の羽生三冠。

 厳しい洗礼を受けても当然の面々なのに、土をつけることができたのは永瀬六段だけという、藤井四段本人も「望外の結果」と振り返る快挙だった。

 対局が行われたのは1月下旬から2月中旬だが、放送は3月12日から始まり、最終の羽生三冠戦が放送されたのが4月23日。ここで一気に盛り上がった。

 AbemaTVの将棋専門チャンネル担当プロデューサー、塚本泰隆さん(29)は手応えをこう語る。

「延べ視聴数は初戦が15万ぐらいで徐々に増え、羽生三冠戦は約65万視聴を記録しました。名人戦の生中継が2日で約50万視聴だったことを考えると、視聴者層を広げた大成功の企画だったと思います」

 同チャンネルの立ち上げから将棋連盟側の実行委員として尽力してきた野月浩貴八段(43)も振り返る。

「将棋チャンネルを作る際に連盟でもチームを作ってお手伝いすることになり、既存の公式戦の中継と将棋の講座番組、そしてオリジナル企画の3本立てという方針を決めました。企画を考えたときに、藤井君も去年の秋にプロになったばかりで注目されているし、ガチンコで強い相手とぶつけようと盛り上がった。羽生さんもデビュー間もないころ、雑誌の企画で当時のトップ棋士に挑むという対戦をされたことがあり、快く受けていただきました」

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