貧困による孤立の問題は単身者だけにとどまらず、高齢者と未婚の子どもといった親子世帯にまで拡大している。親の年金を頼りに暮らす子ども世帯が増えてきているためだ。12年にはさいたま市で、60代夫婦と30代の長男がアパート内で孤立死したというニュースもあった。周辺住人とほとんど会話をせず、父と子が体調を崩し仕事を失った末のことだったという。

「高齢者の年金額を含め、子ども世代の雇用を安定させ、各世代の生活基盤を安定したものにしなければ、孤立の問題は解決しない」(河合さん)

●外から異常は感じない

 いま仕事があって家族がいても、ひとたび貧困に陥ればコミュニケーションが遮断され孤立死する可能性は十分にあるのだ。

「思い切って、家賃が安い公営住宅への引っ越しは有効かもしれません」と前出の鎌田さん。民間のアパートに比べ、比較的コミュニティーがしっかりしている公営住宅は孤立死する割合が低いと鎌田さんは言う。とはいえ、引っ越しもなかなか気軽にはできない。今後増加が予想されるコミュ障高齢者の孤立死を防ぐために重要となってくるのが、自治体の役割だ。

 都内で孤立死が最も多い足立区は13年から「孤立ゼロプロジェクト」を展開。介護保険サービスを利用していない70歳以上の単身世帯、75歳以上のみの世帯の住民情報を自治会や民生委員などに提供し、訪問活動をする。同区千住河原町自治会の山崎明子女性部長はこう話す。

「外から見ると異常は感じないが、玄関に入ると中はごみ屋敷だということもあった。奥さまが認知症が進み、いわゆる老老介護の状態だった。地域包括支援センターにつなぎ、適切な支援が行われるようになりました」

 民間事業者との連携で早期発見を目指しているのが前出の一家孤立死事件があったさいたま市だ。「郵便物や新聞がたまっている」などの通報基準を設け、東京電力など計31業者と連携。民間事業者からの通報が全体の約38%と最も大きいという。

 自治体の取り組みが鈍い場合はどうすればいいのか。宅配などの民間事業者を活用することでコミュ障でも孤立死を防げると語るのは、遠距離介護支援を続けているNPO法人「パオッコ」理事長の太田差惠子さんだ。

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