高市総務相は16年2月、衆議院予算委員会で、「政治的公平」を定めた放送法4条に繰り返し違反した場合、放送局に電波停止を命じる可能性に言及した。

●「異常さに慣れるな」

「為政者にとってメディアは天敵みたいなもの。コントロールしたいと考えるのは当然です」

 そう唱える映画監督の森達也氏は、こう苦言を呈する。

「本来はメディアが政治権力に対して抗さねばならないが、日本のメディアはその力が弱い。権力はメディアが機能しなければ、どんどん増長します。まさしく今の安倍政権がそう。その表れの一つが高市さんの発言だったという気がします」

 メディアの右傾化について森氏は言う。

視聴率や部数だけではなく、これは伝えねばならないという軸がメディアにはあります。メディアで働く人はもっと自分勝手になったほうがいい」

 前出の砂川教授は、若い世代の右傾化を懸念する。

「若い人たちは情報の入手ルートは『偏食』化したネットに依存しているので、どんどん偏った情報を吸収しています。大事なのは、『異常さに慣れるな』ということ。ネットでしか情報を得ない人が増えているからこそ、その都度その情報はおかしいよという反論をきちんと言い続けなければいけない」

(編集部・渡辺豪、山口亮子)

AERA 2017年5月1-8日合併号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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