公開討論会で同会メンバーは「(放送の)9割が安保法案反対」とTBSをやり玉に挙げた。「マスコミ報道で安倍政権の支持率は一瞬で20パーセントも落ちた」とも指摘した。砂川教授らは逐一こうしたデータの論拠の提示を求めたが、回答は要領を得ず、議論は全くかみ合わなかった。

 同会は今年3月の会見で、作家の百田尚樹氏の代表就任を発表した。百田氏は15年6月に開かれた自民党の若手・中堅の勉強会で、「沖縄の二つの新聞はつぶさなあかん」といった発言で物議を醸した人物だ。同会は「ニュース女子」についても、「『沖縄報道の全体主義』に一石を投じる試み」などと評価する見解を発表している。会の賛同人の多数が日本最大の右派団体「日本会議」の関係者だ。

NHK番組改変が起点

 砂川教授は言う。

「これらにかかわる人たちは全て根っこでネット情報を介してつながっています。彼らに共通するのは、安倍政権を批判する個人や団体、メディア報道を攻撃することです」

 匿名のネット空間は潜在的な差別意識も増幅される。「ニュース女子」は、そうしたネット上の言説が地上波に流出した典型例だと、砂川教授は捉える。

「異論を許さない社会は一方向にしか向かわない。これは危険です」

 そう警鐘を鳴らす砂川教授が近年の「メディアの右傾化」の起点と位置付けるのが、01年にNHK教育テレビ(現Eテレ)で放送された番組「ETV2001 シリーズ戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」が放送直前に内容を一部カットされた問題だ。

 番組の担当プロデューサーは記者会見し、自民党の衆議院議員らから圧力を受けて従軍慰安婦問題を扱った番組の内容が改変されていたことを明らかにした。このとき名前が挙がった政治家の一人が現首相の安倍氏だ。

 当時、安倍氏は1997年に結成された「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(略称「教科書議連」)事務局長として活動していた。同議連のメンバーだった議員の多くが安倍政権に入閣している。高市早苗総務相もその一人だ。

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