割れんばかりの拍手だ。一体感が会場を覆う。

 沖縄県の人口は約144万人。5%だと7万2千人だ。ちなみに20万人というのは沖縄戦の犠牲者の概数である。発言の内容が事実かどうか、あるいは、どれだけ専門的知見に堪えうる論理なのか。こういった問いを立てること自体が、いかにも野暮なことのように思えてしまう。

 この熱気と一体感はどこから生まれているのか。

「インターネットに由来するところが大きいと思います」

 そう即答した立教大学の砂川浩慶教授(放送ジャーナリズム論)は、ネット媒体を「偏食メディア」と表現する。

 ネットに流通する特定の情報に共鳴した、偏った物だけを食べている人たちの集まり。ということであれば、盛り上がらないほうがおかしい。

「社会の構造や政治・外交の内実は言うまでもなく複雑です。ファクトに基づく情報をきちんと押さえていれば、あのようなモノトーンの熱情は生まれません」

 砂川教授は、MXテレビの放送番組審議会の副委員長も務めている。1月2、9日放送の「ニュース女子」に関しては、検証番組の制作・放送や、番組内容をチェックする「考査」の体制立て直しなどを局側に求める意見書を2月に提出した。

●キャスター批判の広告

 砂川教授は3月、番組で取り上げられた沖縄の基地反対運動の現場に足を運び、番組内容が「事実誤認どころか、そもそも取材をしていない」と改めて認識したという。

 砂川教授は昨年6月、「放送レポート」(大月書店)の岩崎貞明編集長、東京大学の醍醐聰名誉教授の3人で「放送メディアの自由と自律を考える研究者有志」を結成し、「放送法遵守を求める視聴者の会」の呼びかけ人らとの公開討論会に臨んだ。

「放送法遵守を求める視聴者の会」は2015年11月に発足。同月、読売新聞、産経新聞の両紙に、TBS「NEWS23」の岸井成格キャスター(当時)を、安保法案に関する番組内での発言が放送法第4条に違反しているなどと名指しで批判する意見広告を掲載した団体だ。

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