トランプ氏の大統領令に対する抗議運動 (c)朝日新聞社
トランプ氏の大統領令に対する抗議運動 (c)朝日新聞社

 4月29日で就任100日を迎えるトランプ米大統領。際立つ外交・安保政策とは対照的に内政では崖っぷちだ。背景には、議会共和党との確執がある。

 トランプ大統領の支持率が35%まで下がり「最低」を更新した3月末、米オハイオ州ヤングスタウンを訪れた中林美恵子・早稲田大学教授(米国政治)は、それでも「トランプ」と書かれたプラカードを庭に立て続ける複数の住宅を見かけた。

「まだ希望を持って応援しているという意思表示なんだと思う」

 トランプ氏の大統領当選に大きく貢献した「ラストベルト」(さびついた工業地帯)に位置するヤングスタウンで、中林氏は「プアホワイト」と呼ばれる住民たちの苦しい生活の現状を「肌で感じた」と話す。

「銀行には利用客が全くいない。地元の州立大学の学生たちは、就職の話に非常に敏感に反応する。雇用問題が彼らの家庭を直撃しているんだと思う」

 ラストベルトでは、民主党の支持母体だった労働組合の票までトランプ氏に流れた。従来の共和党支持層とは違う票の積み上げで当選した大統領だけに、

「共和党とは相いれない部分を最初から内包している。このジレンマをどう解いていくのかを考えないと、さらなる支持率低下が起きる」(中林氏)

●共和党との折り合い

 中林氏は2002年4月までの10年間、米連邦議会上院予算委員会のピート・ドメニチ委員長(当時、共和党)の下で、連邦公務員として国家予算の編成を担ってきた米議会の専門家だ。その目で見てきた「トランプ100日」の評価は厳しい。

「シリアや北朝鮮が話題となり、外交にばかり目が行きがちだが、トランプ氏がどこまで政権を維持できるかは、なんと言っても内政が重要。その内政は早くも、壁にぶつかっている」

 原因は共和党との関係だ。

「トランプ氏の下で一つになっている状態とは言い難い。大統領と共和党内各派との間で各論の折り合いがつかない。調整できる人もなかなかいない」

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