知り合いの外来で薬を処方してもらう医師もいる。医師の不養生だと、男性は苦笑する。

「勤務形態や生活習慣を改善できるなら、最初からやっている。どうしようもないんです」

 内科医の男性(57)は、「寿命が5年縮んだ」と嘆く。5年前の人間ドックでは正常値だった空腹時血糖値とLDLコレステロール値が、それぞれ150と200に上がった。肥満、コレステロール値や血糖値、血圧、喫煙の有無などと最新の統計から算出した自身の「余命」が、36年から26年に減ったという。

「心当たりはあります。睡眠不足で、週に3回は付き合いで飲酒する。週2回の外勤日は、帰りのロマンスカーの中で豚カツ弁当を食べる習慣がついていた。反省しました」(内科医男性)

 医師にとっても、健康は一筋縄ではいかないようだ。

「医療は病気を治療するもので、『健康にする薬』は今のところあまりない。未病の段階で、生活習慣に気をつけるのがまっとうなアプローチだと思います」(同)

 健康増進のために、医師らはどんな食品をとっているのか。回答は、ヨーグルト(244人)と納豆(146人)が多数を占め、コーヒー、トマト、オリーブオイルと続く。ヨーグルトには「腸内細菌」「便通改善」「免疫力アップ」、納豆には「血栓予防」「良質なたんぱく質」「ビタミンKなど高い栄養価」を期待していることが見て取れた。

●ヨーグルトの効果は?

 大隅鹿屋病院内視鏡センター長の後藤利夫医師は言う。

「ヨーグルトも納豆も発酵食品ですから、医師も腸内環境に高い意識を持っているということでしょう」

 腸内フローラや腸活という言葉を聞くようになってしばらく経つ。医師もここまで注目する「腸内環境」は、健康にどう関係するのか。

 腸管には、100兆から千兆もの腸内細菌がいるといわれる。その数は37兆といわれる人間の細胞数よりはるかに多い。

 人体の免疫細胞の70%が腸管に集中し、神経伝達物質のセロトニンも脳より多く分泌される。さらに、脳からも独立した独自の神経ネットワークも持ち、単なる消化器官ではなく、重要な役割を果たす器官であることが認識されつつある。

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