終業は20時から22時の間で、忙しければ日付が変わる。月に10日ほど当直業務もあり、残業は少ない月で60時間、多いと120時間にも及ぶ。当直明けの日中、控室のソファで倒れるように仮眠することもある。代わりがいないから、やるしかない。今のところ、健康診断の結果に異常はないが、30代半ばになり、体力は落ちたと思う。

 AERAでは3月末、医師専用コミュニティーサイト「MedPeer(メドピア)」の協力のもと、現役医師を対象に、健康に関するアンケートを実施した。男性468人、女性58人、計526人の医師から回答が寄せられた。

病気ではないが、日常にちょっとした不調を感じることがある」と答えた医師は男女計408人、実に全体の77.6%にものぼる。

 408人が訴えた不調の内容は、慢性的な「倦怠感」「疲労感」「ダルい」など、いわゆる「ダル重」が211回答でトップだ。原因は、睡眠不足と答えた医師が281回答で70%近くを占め、以下、過労、心的ストレス、運動不足、飲み過ぎと続く。

●対策は「休む」と「眠る」

 日常的な不調に対し、医師はどんな秘策を持っているのか。

 期待に反し、医師からの回答は極めてシンプルで、そのほとんどが「眠る」「休む」だった。

 メドピアの代表取締役社長で、現在も診療を継続する石見陽医師は、こう分析する。

「睡眠不足や過労など、不調の原因がはっきりしているからでしょう。医局勤務時代は私自身もそうでしたが、医師の特技はどこでもすぐ眠れることです」

 ただし、睡眠や休息を思うように取れるケースは、激務の医師だからこそ、そう多くはない。

 睡眠不足と過労、ストレスにさいなまれ、運動不足がちで、飲み過ぎることもある。

 現場は常に人手不足。休みたいけれど休めず、体にいいことを実践できない。そんな医師らの就労事情は、現代日本の職場の縮図でもある。

 そして、もはや国民病になった「ダル重」の救世主こそ、数々の飲料やサプリ、健康食品などの健康商材ではなかったか。現に多くの働き手たちが、期待を抱いて購入に励むためか、市場規模は年々拡大している。

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