こう警鐘を鳴らすのは同研究所の食品保健機能研究部部長の梅垣敬三さんだ。

 厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」として1日に必要な栄養素の目安を示しているが、取りすぎると体調不良などの健康被害が出る「耐容上限量」も併せて定めている。

 梅垣さんによると、栄養素入りのおやつを補完的に与える程度なら、上限を超えることはほぼない。ただ、錠剤のサプリの場合、成分が濃縮されており、子どもにとっては過剰摂取となる危険性がある。ビタミンなどは健康体であれば、過剰摂取しても尿から排出されるが、腎機能が低下している場合は体に負担となる。子どもは身体が未発達のため、摂取したものによる影響も出やすい。アレルギーなど体質も十分に分かっていない状態で、「身体にいいから」と与えるのはリスクが高いのだ。

「苦手な物を食べないからといって、サプリで補うことが習慣づけられると、その後も苦手な食べ物を克服できずにかえって偏食を助長することもある」

●摂取量にある「誤解」

 さらに、梅垣さんは、1日の栄養摂取量についてのある「誤解」が、サプリを与える動機につながっていると指摘する。

「毎日必ず栄養の目安の量を摂取しないといけないと誤解する方がいるのですが、これは『習慣的』な摂取量。日によってでこぼこがあっていいんです。真面目な人ほど『完璧な献立を』と考えがちですが、毎日続けるのは難しいですから」

 その日の食事で特定の栄養素が足りなければ、後日与えれば問題ない。栄養の種類によっても異なるが、おおむね1カ月程度で平均を考えればよいのだ。

 健康な成人には「健康に良いもの」でも、子どもにとっては、時期や与え方、量によっては毒と化してしまうものもある。

 先月30日、生後6カ月の男児が、蜂蜜を混ぜた離乳食を与えられ「乳児ボツリヌス症」で死亡するという痛ましい事故も起きた。すべての人に安全で健康に良い食べ物など存在しない。

 誰が、何を、どう食べるのか。情報に流されず、いま一度見直してみては。

(編集部・市岡ひかり

AERA 2017年4月24日号