岡田:僕らも、映画を作るとはどういうことなのか、演じるとは何かということを問われていて、現場ではずっとその答えを探していたような気がします。台本にも空白が多くて、後半、篤と啓太が出会ってからのシーンは、監督から「2人のやりやすいようにセリフを変えていいから」って言われたんだよね。

小栗:そう。「言いたいセリフは言えばいいし、言いたくないものは言わなくていい」って。サウナに入りながら、ああでもない、こうでもないって毎日考えるのが最高に楽しかった。

岡田:心のスクラム組んだよね。

小栗:それで生まれたのが「俺たちはもっと早く出会うべきだった」というセリフ。台本にはなかったけど、これを言わないと2人の関係性が進まないと思った。お互い持ち帰って考えて、さらに現場で「どう?感情にしっくりくる?」と打ち合わせをして本番を迎えたんだよね。

柄本:本当にぜいたくな現場でしたね。日本映画のレジェンドに見守られながら、同世代の役者同士でそんな作業ができるなんて。

岡田:僕は大作さんに言われて、現場でカメラも自分で回したんだよ。「フィルムを回せば世界が変わる。どういうふうに自分が撮られているかがわかれば芝居が変わる。感情が見えてくるから」って。やってみたら、本当に役者の感情が飛んできてびっくりした。こういうことを僕たちにやらせるのは、これからを考えているからだよね。改めて、モノを作る楽しさを実感したよ。

小栗:確かに。しびれたね。

●ダメならダメでいい

岡田:僕はまだ自分で自分の実力を認められていない気がしていて。でも、自分を高めようとするあまり、「仕事だからこうあるべきだ」とか「もっとこうしなくてはいけない」とか、背負いすぎていたのかもなって。

小栗:降旗監督も大作さんも、本当に現場を楽しんでるよね。

岡田:「ダメだったらダメでいいじゃねえか」って感じが楽しそうなんだよ。「なんで俺がこんなスタンスでやれてるか知ってるか?腕がいいからだよ」とか言って(笑)。40代はそういう自信を持てるようになりたい。今回は、いろいろな意味で幸せだったなと感じています。

AERA 2017年4月24日号

(構成/ライター・まつざきみわこ)