●負けん気の強さも

 女性は女性の上司を嫌う。一般社会ではそんな声も耳にするが、選手の反応はどうか。佐々木前監督のときからチームに残るMF宇津木瑠美(28)は高倉監督の印象をこう話す。

「やはり女性監督ということで、妥協が少ないというか、すごく細かいところにも目が届く厳しさはあると思います。とくにピッチ外では歩き方ひとつとってもちゃんと手を振ってシャキシャキ歩きなさいとか言われたり(笑)。もちろん、それは自分たちに至らない部分があるからなんだとは思いますが……」

 また、これまでのキャリアで初めて女性監督の下でプレーすることになった新主将のDF谷紗希(26)は、「女性だからどうとか、男性だからどうっていうのはあまりない」と言い、こう続けた。

「監督が代わり選手も代わったので、チームの雰囲気が変わった部分はあります。(女同士ピリピリ?)それはないです。監督とはいい意味でフレンドリーに話せますし、どちらかというと選手主体で、監督と一緒にチームをつくっていくような形になってきたと思います」

 記者会見などの受け答えでは、冗談を連発した前任者とは違い、キリッとした表情で負けん気の強さもうかがわせる。

 高倉監督は、選手として15歳で日本代表に入り、2度のW杯と1996年アトランタ五輪を経験。指導者としては14年に17歳以下の女子日本代表を率いU-17W杯初優勝、16年には20歳以下の女子日本代表監督としてU-20W杯3位と世代別代表を率い優れた手腕を発揮してきた。

 現役時代にそのプレースタイルから“女ラモス”と呼ばれた指揮官は、初の女性監督として注目されるが、満を持して就任したともいえる。

「スピードやパワーといったフィジカル面はまだ足りないが、日本人の技術や組織力は世界でもトップクラス。選手の個性を発揮しながら、本気で上を目指す集団となり、また強いなでしこジャパンをつくっていきたい」(高倉監督)

 高倉監督は、なでしこジャパンを再び常勝軍団へと導けるか。(スポーツジャーナリスト・栗原正夫)

AERA 2017年4月24日号