ただ、「個人的な臆測」として、こうも付け加えた。「金正恩(ジョンウン)(朝鮮労働党委員長)と同様、トランプ(大統領)も何をしでかすか分からない人物だけに、共通認識の枠を超えた不測の事態が、全く起きないとは言い切れない。トランプの言うレッドラインが一般常識からずれていないといいのだが……」

北朝鮮は準戦時体制に

 4月上旬、アジアプレス大阪事務所に北朝鮮内部から情報が届いた。

「北朝鮮は今、準戦時体制のような状態にある。労働者や学生ら民間武力まで総動員させられ、高射砲陣地に寝泊まりするなどしている。ドローン撃墜命令などが出されている──」

 連絡を受けた石丸次郎・大阪事務所代表によると、3回目の核実験を実施した2013年に北朝鮮が朝鮮半島の休戦協定白紙化などを次々に宣言して緊迫した時よりも「ひどい状態」だと伝えてきており、「家に帰れないし、商売の時間もなくて大変」などの報告があったという。

「ただ、北朝鮮の人たちは、この50年間、政府からずっと『戦争が起こる』と言い続けられ、信用しなくなった。体制からしてみれば、米韓合同軍事演習が続く中、シリア攻撃や空母の近海展開をする米国に対して国内の緊張を高めたいのだろうが、笛吹けど踊らずの状態。むしろ、『戦争をやるならやったらいい』と言う人も多い」

 石丸氏はそう解説した。

●今そこにある危機

 11日に最高ポスト就任から5年を迎えた金正恩委員長は、当初から核・ミサイル開発に固執してきた。父の金正日総書記の17年間では核実験が2回、ミサイル発射実験は16発だったのに対し、金正恩委員長は5年間で核実験3回、ミサイル発射は40発を超える。今年もすでに6発のミサイルを発射し、核保有への決意も強調している。

「自身の一人独裁体制の確立に血眼の5年間だった。自身の偶像化を進め、義理の叔父の粛清や異母兄の暗殺をしてまでも、国中を絶対服従させることに集中してきた。それはこれからも変わらない」と石丸氏。

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