米韓合同軍事演習に向かう途中の3月9日、東シナ海で合流した海上自衛隊の護衛艦と航行訓練をする米空母カールビンソン(写真:U.S. Navy Photo提供)
米韓合同軍事演習に向かう途中の3月9日、東シナ海で合流した海上自衛隊の護衛艦と航行訓練をする米空母カールビンソン(写真:U.S. Navy Photo提供)

 ともに何をするか分からない、米朝の首脳が軍事行動をちらつかせてにらみあう。圧力と挑発の応酬に朝鮮半島が緊迫している。

「当初の予定(豪州)を変更し、北へ向けて出港せよ」

 4月8日、米第3艦隊の原子力空母カールビンソンは、米海軍太平洋艦隊司令部(ハワイ)の指令を受けた。寄港中のシンガポールを出港して、向かった先は朝鮮半島。3月中旬に米韓合同軍事演習に参加し、釜山に寄港したばかりだったが、急遽、戻されることになった。

 朝鮮半島や日本を含めた東アジアを担当するのは、米海軍横須賀基地を母港とする第7艦隊の原子力空母ロナルド・レーガン。同空母が横須賀で1月から4カ月にわたる定期修理を受けているため、6回目の核実験の動きを見せた北朝鮮への圧力を高めるための急派となった。海上自衛隊との共同訓練も実施し、日米協調もアピールする。

 トランプ政権の「軍事行動も選択肢」という本気度を最大限に示すため、4月末まで続く米韓合同軍事演習に加え、存在感のある空母戦闘群が重要だった。今回展開する空母群は艦載機の航空団のほか、ミサイル駆逐艦2隻やミサイル巡洋艦で構成され、シリア攻撃で使われた巡航ミサイルの発射や、弾道ミサイル迎撃能力を持つ。

●日韓両政府に漂う冷静

「とても強力な艦隊を送った」

 4月11日に収録された米テレビのインタビューで、そう強調したトランプ大統領は、原子力潜水艦も展開していることまで明かした。同日付のツイッターでは「北朝鮮はもめごとを期待している。もし中国が(米国に)協力するなら素晴らしい。協力しないのなら、米国が中国なしで問題を解決する」と書き込み、激しく威嚇を繰り返している。

 トランプ政権発足後、初の米中首脳会談の最中だった6日、巡航ミサイル59発を突然発射したシリア攻撃以来、トランプ政権は「レッドライン(最後の一線)」を越えたら北朝鮮も軍事行動の対象となるというメッセージを送り続けている。米空母群の展開に北朝鮮も「自らの行為が招く破局的な結果について、米国が全責任を負うようにする」と応酬しており、一触即発の緊張が朝鮮半島を包んでいる。

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