●「身内」の逮捕に絶句

 実際に子どものための保護者活動や防犯支援にも積極的だった。

 リンさんが通っていた松戸市立六実第二小学校では、保護者会「二小会」の会長を務めてきた。同校に通う児童の保護者女性(45)によると、中学校の入学式に渋谷容疑者は来賓として出席していたという。児童の登下校を見守る地域ボランティアをしていた女性(72)は、逮捕2日前の12日まで渋谷容疑者も「見守り隊」に参加していたといい、「どんな心境だったのか」と複雑な表情だった。

 別の男性(71)によると、見守り隊は、児童の登下校時に通学路の決まった所に立って見守るボランティアで、月3回くらいの持ち回り制だという。取り組みに参加していた渋谷容疑者が逮捕されたことを知った男性は、「『身内』が逮捕されたということで、子どもたちは何を信じていいのか。子どもたちに不安を与えたと思う」と残念がった。

 事件の発端は先月24日朝。修了式に出席するために登校中だったリンさんが行方不明になり、2日後に自宅から約12キロ離れた排水路脇の草むらで遺体で発見された。県警の捜査によると、頭部に硬いもので殴られたような痕があったほか、首を絞められたような痕跡もあったという。その後、リンさんと見られる子どものすぐ後ろを歩く人物の映像が、複数の自動車のドライブレコーダーに記録されているのが分かり、県警は人物の特定などを急いでいた。

 リンさんの遺族のために率先して寄付金集めまでしていたという渋谷容疑者。犯行に及んだ背景に何があったのか。黙秘を続ける渋谷容疑者の動機について、県警は、「今後の捜査で明らかにしたい」としている。(編集部・澤田晃宏、野村昌二、山本大輔)

AERA 2017年4月24日号