●「チャレンジは落とし穴?」(元グループ会社の技術系現役社員/男性40代)

 不正会計の引き金として注目された「チャレンジ」は、当時、私もよく要求されました。ただ、無理なことは無理なので、理由を説明して無理と言えば、それ以上要求されませんでした。しかし、立場が上になれば、無理を通そうとするかもしれませんし、出世も絡めば、赤字を出したくないという意識も働くでしょう。

 (自分の職場の)会社の売却はニュース先行で、決定後に社員が集められ、社長から説明を受けました。売却後、給与面も含め、待遇はよくなりました。不正会計が明るみに出た際も、売却の時も、東芝に憤りを感じていましたが、結果的にはよかったです。

●「不正会計抑止の動きも」(元社員のSE/女性(52)1985~2015年在籍)

 異変を感じたのは、2005年夏です。当時の専務は不正会計ができないよう、在庫管理や会計システム改変を私に依頼したいようでした。このままではまずいという言われ方ではっきりせず、私は事情を知らなかったので、真意に気づきませんでした。

 06年、WH買収前後から、価値観が変わった気がします。人間関係はぎくしゃくし、職場は人事部直下となり、仕事や職場改善の前向きな提案も上司や前任者への否定とみなされるようになっていきました。

 14年頃から、体制や仕事に意見を言う人をグループミーティングから外し、元自衛官の社員が転入してきて「指示・命令した業務のみこなせ」という仕事の与え方に変わっていきました。意見した人が降格させられたり、異動させられたりするのも見てきました。世間やマスコミから追い込まれない限り、本当のことを言わないのは今も同じ。社内通報も実は監視のためです。意見を言う者を見せしめにし、排除したまま、それを改めようとしません。

AERA 2017年4月17日号