あまりにも身近にあると、その良さに気づかない。「落語も同じかもしれませんよ(笑)」と、昇太さん。

「とにかく絵を描くことが好きな人だったんだろうな、と思います。『この絵が描きたい』ではなく、『とにかく絵を描いていたい』という人。だから、いろいろな技法にも、手を伸ばすことができたんでしょう」

 展覧会に出ている作品で、印象的だったのは、どれだろうか。

「擬人化されている動物が曲芸している絵などは、思わずにんまりする可愛さがありますね。最初に展示されている鴉の絵は、同じ動物でもまったく違う。濃淡だけで描かれている鴉の絵は、思わず『うまいな』と唸る感じです」

●ユーモア溢れる春画も

 六曲一双の屏風に大胆に妖怪たちが描かれた「百鬼夜行図屏風」など、大きな作品も多い今回の展覧会。豪奢な着物をまとった「地獄太夫と一休」など、趣向を凝らした作品からも、暁斎ならではの世界を見て取れる。

 そして大人向けには、近年、話題になっている春画のコーナーもある。春画といっても、暁斎らしいユーモアが感じられるものだ。

「日本画というとおとなしいものだと思っている方もいらっしゃるでしょうが、そういう人にこそ、暁斎を観てもらいたいですね。楽しくて奥深い、暁斎のさまざまな魅力が、生だからこそ伝わると思います」

(ライター・矢内裕子)

AERA 2017年4月10日号