戦後日本の通勤・通学を彩った「電車」たち_01(AERA 2017年4月10日号より)
戦後日本の通勤・通学を彩った「電車」たち_01(AERA 2017年4月10日号より)
戦後日本の通勤・通学を彩った「電車」たち_02(AERA 2017年4月10日号より)
戦後日本の通勤・通学を彩った「電車」たち_02(AERA 2017年4月10日号より)
大森正樹(おおもり・まさき)/「鉄道会社自ら設計していくことが重要。30年先まで考えることはメーカーにはできない」(写真部・堀内慶太郎)
大森正樹(おおもり・まさき)/「鉄道会社自ら設計していくことが重要。30年先まで考えることはメーカーにはできない」(写真部・堀内慶太郎)

 国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。

 JR西日本が13年にスタートさせた「大阪環状線改造プロジェクト」。その具体的な取り組みについて、車両部車両設計室課長の大森正樹氏を取材した。

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 首都圏に次いで多くの通勤客を抱えるJR西日本。大阪市の中心街を走る大阪環状線(全長21.7キロ)に昨年のクリスマスイブ、55年の歴史で初めての大阪環状線専用設計新型車両323系がデビューした。関西はJRと私鉄他社が並行して走る路線も多く、熾烈(しれつ)な競合路線対策で新車が投入される一方、大阪環状線は後回しになっていた。

 13年からJR西日本は「大阪環状線改造プロジェクト」をスタートさせ、駅の改良・美化、高架下の開発・リニューアル、そして車両の新造に乗り出し、323系が開発された。現在、56両(8両・7編成)が大阪環状線を走っており、今後3年間で全168両(8両・21編成)が配備される。

「一番大事なのは、安全です」とJR西日本の車両部車両設計室課長の大森正樹さんは言う。むろん、05年の福知山線脱線事故を踏まえてのことだ。

 323系には、EB-N形装置(運転士異常時列車停止装置)という装置を初めて採用。運転士が急病で制動装置から手を離せば緊急停止する。そのほか、脱線や衝突など車体の異常を監視・検知する「車両異常挙動検知装置」を導入。前面衝撃吸収構造や側面衝突対策もとっている。

 大森さんは、こう語る。

「鉄道会社に設計部署があるのは不思議に思われるかもしれません。しかし、お客様のことを思い、乗務員がどう扱うか、車両をどのように保守していくのかを考える使命がある」

(編集部・野村昌二)

AERA 2017年4月10日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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