スカーレット・ヨハンソン演じる少佐が歩く街は、プロジェクションマッピングのような造形が街中を覆う。ビル正面からは顔が突き出している (c)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
スカーレット・ヨハンソン演じる少佐が歩く街は、プロジェクションマッピングのような造形が街中を覆う。ビル正面からは顔が突き出している (c)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
少佐が水路で戦うシーンは、押井監督による劇場版アニメでも印象的だった (c)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
少佐が水路で戦うシーンは、押井監督による劇場版アニメでも印象的だった (c)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
少佐の上司の荒巻を演じるのはビートたけし。背景の緑の文字列は、「マトリックス」に影響を与えた押井版の冒頭を彷彿させる (c)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
少佐の上司の荒巻を演じるのはビートたけし。背景の緑の文字列は、「マトリックス」に影響を与えた押井版の冒頭を彷彿させる (c)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 SF作品に多大な影響を与えた「攻殻機動隊」を、ハリウッドが実写映画化した。劇場版アニメを手掛け、世界的にヒットさせた押井守監督は、ハリウッド版に「新たな視点」の存在を指摘した。

 時代は近未来。スクリーンには猥雑なネオンに彩られた高層ビルが林立する、香港や上海を彷彿とさせる雑多な夜の街が映し出される。そこにひしめくのは、身体の一部を機械に置き換えた「改造」人間だ。間をぬって、スカーレット・ヨハンソン演じる「少佐」がさっそうと歩く。その身体もまた、機械で作られた「義体」──。

「スカーレットの『身体』が持つ存在感が素晴らしい。攻殻機動隊では『身体』が重要な意味を持ちます。彼女なしには、この作品は成立しえなかった」

 撮影現場にも足を運んだという押井守監督(65)は、ハリウッド版攻殻機動隊、映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」についてこう話す。

 すべての「攻殻機動隊」の原作は、1989年に士郎正宗さんが発表した漫画だ。「サイバーパンクの金字塔」とされ、設定やストーリーを変えながら繰り返しアニメ化されて、30年近くにわたってSFファンに親しまれてきた。

 なかでも、95年に公開された押井監督による劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は世界的な大ヒットを記録し、その世界観はウォシャウスキー姉妹による「マトリックス」をはじめ、多くの映画などに影響を与えた。

●実写しかできないこと

 ハリウッド版は、その「攻殻機動隊」の初の実写化。もともとスカーレットの大ファンだという押井監督が立ち会ったのは、少佐役の彼女が夜の街を歩き回り、地下の怪しげな酒場に入っていくシーン。香港の現場だった。監督は言う。

「スカーレットが一晩中、ただ歩いているだけの現場でした。でも、これはすごいぞと思った。同じ映画監督として、僕は『実写にしか実現できない場面』が見たいと思っていました。それは結局、役者の存在感だった。スカーレットの存在感が、何よりもこの映画を支えていることを確認できました」

 物語の主人公「少佐」は、脳以外のすべてが義体で作られたサイボーグ。サイバーテロに立ち向かう特殊部隊である「公安9課」の若きエリートだ。スカーレットに求められたのは、実際の肉体を使いながら、あたかも義体のサイボーグであるかのように表現すること。当然、それには困難を伴う。

「身体」に込められたものの意味を、押井監督はこう話す。

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