屋山太郎(ややま・たろう)/1932年生まれ。政治評論家。元時事通信解説委員。現役時代に土光臨調にも参画。政治、外交の舞台裏に精通。著書に『安倍晋三興国論』など多数
屋山太郎(ややま・たろう)/1932年生まれ。政治評論家。元時事通信解説委員。現役時代に土光臨調にも参画。政治、外交の舞台裏に精通。著書に『安倍晋三興国論』など多数

 国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。

 AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。国鉄解体前夜、何があったのか。国鉄OBたちの証言をもとに、鉄道員の人生を翻弄した実態に迫っている。その中で、臨調第4部会参与を務めた屋山太郎さんに、85年に更迭された仁杉国鉄総裁について話を聞いている。

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 私は当時、時事通信の解説委員でしたが、社長に言われて臨調の参与になりました。

 国鉄をここまで荒廃させたのは、経営者の自覚のなさと労働組合のエゴ。一挙に解決するには、国鉄を分割して民営化する以外にない──。そんな論調の記事を雑誌「文藝春秋」の1982年4月号に「国鉄労使『国賊』論」として発表しました。

 83年になると、高木文雄総裁が辞任し仁杉巌さんが第9代国鉄総裁になります。仁杉さんを推薦したのは角さん(田中角栄氏)。仁杉さんは民営化のエースとして国鉄に送り込まれたはずでしたが、「国体護持派」と呼ばれた現状維持派に取り込まれます。私は、「民営化は面従腹背でいく」と話す国鉄幹部のメモを入手し、それを中曽根さん(当時の中曽根康弘首相)に見せました。すると中曽根さんはカンカンに怒り、辞めさせるべき幹部の名を挙げるよう私に言います。臨調委員で元大本営作戦参謀の瀬島龍三さんに相談すると、「根こそぎやれ」。総裁一人だけ代えても意味がないと。そして私は仁杉さんはじめ縄田国武副総裁、半谷哲夫技師長など8人の名簿を中曽根さんに届けたのです。最終的に1人を除き、7人更迭されました。

 分割民営化が実現したのは、「鬼の動労」が民営化に協力的になったことが大きかった。そしてその裏に「国鉄改革3人組」と呼ばれた葛西敬之君、井手正敬君、松田昌士君の活躍がありました。3人がいなかったら民営化の「絵」は描けなかった。民営化反対派からは、夜中に無言電話がよくかかりました。今振り返ると、おもしれえことをやったな、という思いです。

(構成/編集部・野村昌二)

AERA 2017年4月10日号