ニューヨークはもちろん、ロンドン、ミラノ、パリにまで反トランプの嵐が吹き荒れた(※写真はイメージ)
ニューヨークはもちろん、ロンドン、ミラノ、パリにまで反トランプの嵐が吹き荒れた(※写真はイメージ)

 ニューヨークはもちろん、ロンドン、ミラノ、パリにまで反トランプの嵐が吹き荒れた。「もう、黙っていられない」。デザイナーたちは決意をビジュアライズしてみせた。

 メイシーズなど老舗や名門百貨店が閉鎖したり赤字に転落したりするなど、ファッションを取り巻く業界が停滞するアメリカ。打開策として、2016年に「See Now,Buy Now(コレクションを見てすぐ購入できる)」システムがスタートした。

 SNS慣れした若い消費者をライブストリーミングから購買に結びつけるなど、さまざまな試行錯誤がなされているが「正解」はまだない。

●「私は移民」のプリント

 17年秋冬コレクションでは、一部の人気ブランドがロサンゼルスにショーの場を移すなど、ニューヨークコレクション縮小の気配が濃厚。ランウェーを彩ったのは、そんな閉塞感にいらだちを募らせたニューヨークの若手をはじめ、各国デザイナーたちの、ダイバーシティーとフェミニズムを謳う声高なメッセージだった。

 背景に、トランプ大統領による排斥主義政策へのアンチテーゼがあることは疑いようもない。

 シンガポール生まれ、ネパール育ちのデザイナー、プラバル・グルンは、ショーのフィナーレでモデルに「I am an Immigrant(私は移民)」「Yes,We Should ALL be Feminists(私たちは全員がフェミニストだ)」とプリントしたシャツを着せた。インドで学んだ後にニューヨークに移住。ミシェル・オバマが彼の服を愛したことでも知られる。

 マーク・ジェイコブスはトランスジェンダーのモデル、アビー・アコスタを起用。「美しさ」が性の枠を軽々と超えることを証明した。

 LGBTだけではなく、豊満なプラスサイズやシニアモデルなど、デザイナーたちはモデルの起用でも多様性を強調。イスラムのヒジャブを着用したモデルも登場した。ケニアの難民キャンプで生まれたソマリア系アメリカ人ハリマ・アデンだ。起用したミラノコレクションのマックスマーラは、「世界中のあらゆる国や地域の女性に着てもらうことを想定している」とコメントしている。

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