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ルポ・奨学金に奪われた未来、仕送り激減、ブラック企業への就職…

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by 市岡ひかり

契約社員の男性(30)の元に届いた催促通知。「どうせ支払えない」と数年間、封さえ開けていないものもあった(撮影/写真部・松永卓也)

契約社員の男性(30)の元に届いた催促通知。「どうせ支払えない」と数年間、封さえ開けていないものもあった(撮影/写真部・松永卓也)

●相談の6割は保証人

「息子が奨学金を返還していないようだ」「延滞分を一括で支払えと言われて困っている」

 若者の労働問題を扱うNPO「POSSE」には、奨学金の保証人となっている、親や親戚からの相談が相次いでいる。実に相談全体の6割に上り、借りた本人と連絡が取れないケースも少なくない。

 日本学生支援機構では、4カ月以上延滞した場合、債権回収会社に督促を委託。9カ月を過ぎると、支払い督促申し立ての予告書を発送。この通知が届いて初めて、子どもが奨学金を返還していないことに気づき、相談してくるのだという。事務局長の渡辺寛人さんはこう明かす。

「奨学金は親や親戚に債務が移る、『時限爆弾』のような存在に。若者の問題として切り離せるものではなくなっています」

 また、奨学金に関する訴訟を多く担当する弁護士の岩重佳治さんは、相次ぐトラブルの本質を、こう指摘する。

「現在の奨学金制度は返済能力を無視して、多額のお金を貸しています。リスクがある中で貸すことが前提なら、無理な返還を強いるべきではありません。返還ルールをもう少し柔軟にするだけで、返還で困る人は減ります」

 いまや奨学金は我々に最も身近な「借金」になった。返せない人は追いつめられ、必死で返し続ける人は強い不公平感を抱く。奨学金を起点にした、社会の分断が生まれている。

(編集部・市岡ひかり)

AERA 2017年4月3日号


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