三井さんが日本を出て20年余りの間、北カリフォルニア、ニューヨーク州、イングランド、スコットランド、南スイス(イタリア語圏)、マカオで働き暮らす中で遭遇したパワフルな女性たちは、愛妻家のパートナーを持つ人が圧倒的に多かったという。

「そこには甘えや依存も怖がらずに内包するある種の豪胆さと、どのみちまぎれもない他者である配偶者と、子どもの有無にかかわらず新しい家族をつくる、そういうひとつのエンタープライズ(事業)の相棒としてのカップルがいました」

 愛妻家になると夫自身にも大きなメリットがもたらされる。日本愛妻家協会主任調査員の小菅隆太氏はこう語る。

「仕事で疲れて帰ってきたら妻がイライラしていて、気が休まらない。そんな話はよくありますが、夫が愛妻家であれば、家庭環境の冷え込み防止につながりますし、しっかりと英気を養えるので、仕事へも力が入ります。妻が仕事をしているならなおさら、互いを尊重し合うことで家庭の経済も良くなります」

 さらに、恋人・夫婦仲相談所所長の三松真由美氏も、メリットをこう話す。

「なぜこの人は怒っているのか、悲しんでいるのか、落ち込んでいるのか、という他者の気持ちを察する力は、社会で生きていくうえで最も重要なスキル。妻という身近な他人を大切にするということは、他者への配慮力を磨くことにつながります」

 そうはいっても、妻にしてみれば「はあ?」と反感を買うような言動をしてしまう夫もいる。小菅氏は自身の経験から学んだことがあるという。

「家事を手伝えば愛妻家かというと、そうではないですよね。私も以前は妻に、『お皿洗っておこうか?』と声をかけながら家事をやっていたのですが、愛妻家としてはそれはNGだったんです。『やっておこうか』という言葉が、そもそも妻がやるものという前提で成り立っている。話し合って家事を分担しました、だから自分は愛妻家です、というふうには言えないんです。妻が承認して、やっと愛妻家でいられる」

次のページ