「昔から詩を書くことや読書が好きでしたが、パキスタンには映画学校もなく、仕事に有利な理数系に進みました。でもやっぱり映画制作を諦められず、奨学金を得てコロンビア大学で学ぶことができたんです」

 構想から15年を経て完成した母娘の物語。その間に自身の生活の変化もあった。

●自身の「娘」が創作の力に

「03年に結婚し、いま娘が9歳になります。自分が母親になったことで、よりこの作品を作る必然性を感じました。娘の存在が映画を作るエネルギーと希望を与えてくれたんです」

 ノーベル平和賞受賞のマララ・ユスフザイさんもパキスタン北部の出身だ。女性の社会進出はどんな状況なのだろう?

「どの地域・社会に属しているか、そしてやはり両親の経済状況の違いが運命を左右してしまいますね。都市部の中流階級の家庭では男女ともに大学まで行かせることが主流ですが、部族が暮らすような山間部では、学校すらなかったりしますから」

 現在、ニューヨーク在住。パキスタン=危険な国というイメージを日々実感するという。

「ネガティブなニュースばかりが報道されるので、残念だけど仕方がない。この映画で『本当のパキスタン』が、よい面も含めて伝わることを願います」

(ライター・中村千晶)

AERA 2017年3月27日号