2015年の世界選手権の日本代表に選出され、男子200メートル準決勝に進出した (c)朝日新聞社
2015年の世界選手権の日本代表に選出され、男子200メートル準決勝に進出した (c)朝日新聞社

 陸上男子短距離のサニブラウン・アブデルハキーム(18)が今秋米国のフロリダ大学へ進学する。今月1日には高校を卒業。都内で取材に対応し、現在の心境を語った。

 2015年は、17歳以下の世界ユース選手権で100メートルと200メートルの両種目で大会新記録で優勝、北京で行われた世界選手権の200メートルでも準決勝に進出するなどして脚光を浴びた。

 しかし16年は一転、代表入りが期待されたリオ五輪を直前に負ったケガ(左太ももの故障)で棒に振るなど苦しんだシーズンとなった。フロリダ大学へ進学を決めた理由についてはこう話す。

「一年中晴れていて暖かいこと。それと勉強面で、すごくサポートしてくれるということ。勉強は正直したくないけど、一生陸上ができるわけではないし、将来無職になっても困るので(笑)。スポーツマネージメントに興味はあり、できるだけ視野を広げられたらと思っています」

●レベルの高い環境へ

 周囲が17年の復活を待望するなか、はやる気持ちや焦る様子がないところに大物感が漂う。フロリダ大学は、陸上のみならず、アメフトや水泳などのスポーツの強豪校として知られる。昨夏のリオ五輪にも現役、OBを含め約30人の選手が出場し、陸上部にも将来世界の舞台での活躍が期待される有力な選手が多くいるという。13歳で米国に渡ったテニスの錦織圭はもちろん、世界で戦う日本人選手は海外を拠点にしているケースが多く、レベルの高い環境に身を置くことはサニブラウンにとってもプラスに働く。

 日本の大学とは違い、米国の大学は特待生がスポーツだけをやっていればいいというわけではない。陸上で結果を出していても、学業で一定の成績を収めることができなければ練習参加すら認められない。フロリダ大学は家庭教師のようなアドバイザーが付くなどサポート面が充実しているという。

 授業はもちろん、すべて英語で、ガーナ人の父を持つとはいえ、日本で生まれ育ったサニブラウンにとっては簡単なことではない。だが、今年は年明けから単身で南アフリカやオランダでトレーニングを積んできたため、言葉の壁や海外での生活に大きな支障はなくなってきたという。

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