「下積みが長くてやっとつかんだチャンスだったからね。絶対に失敗したくなかった」

 演技の「完璧さ」には定評がある。役柄に応じた肉体改造や外国語の訛りの習得は当たり前。マクベスを演じたときはシェークスピアの英語のせりふが一言一句、頭に入っていて、撮影中、台本に手を伸ばすことはなかったと言われる。もちろん完璧なスコットランド訛りだった。

「映画は撮り終わったらやり直しがきかない。だから事前にやるべきことは怠りなくやるんだ。準備不足のせいでうまくいかなかったら、自分が許せない。準備が足りなくて予想外の展開に対応できないのもいやだ。完璧に備えておけば、現場で楽しめるしね。もちろん、準備している間は恐怖と不安と緊張で大変なんだけど」

●半端ない色気の源は

 演技をするのは物語を伝えたいから。「それでも夜は明ける」のときは台本を読んで泣いた。

「数千万人ものアフリカ人が奴隷にされた歴史を伝える物語。僕が演じた奴隷支配人は大事な役で、演じるからにはきちんと形にしたかった。映画館を出たお客さんが人間とは何だろう?って考えてくれるといい。映画のそういう力が好きなんだよ」

 5月末に公開される「光をくれた人」も同じだ。

「感動作と言われるけど、善人たちの行き違いで生まれる人間ドラマ。その古風な作風が、むしろ新鮮だと思ったんだ」

 超イケメンなのに写真撮影も有名人扱いも苦手。フツーの人だけど「役者バカ」。そんなギャップの数々が半端ない色気を放っていた。(ライター・鈴木あかね)

AERA 2017年3月13日号