1977年生まれ。これまでで一番の難役はと聞くと、「スティーブ・ジョブズ」と即答。「187ページの脚本にすさまじいテンポ。あれはきつかった」(撮影/山本倫子)
1977年生まれ。これまでで一番の難役はと聞くと、「スティーブ・ジョブズ」と即答。「187ページの脚本にすさまじいテンポ。あれはきつかった」(撮影/山本倫子)

 アクション大作とヒューマンドラマ。タイプの異なる2本の映画とともに、来日した。複雑でダークな役そのままの人かと思いきや──。

 スクリーンではいつも眉根をよせて苦悩している。「それでも夜は明ける」の残忍な奴隷農園主や「シェイム」でのセックス中毒のビジネス・エグゼクティブ、悲劇の王マクベスに異能の人スティーブ・ジョブズ。ダークで極端な役柄が多いのだ。

 ところが、現れたのはジャンパー姿のナイスガイ。朴訥(ぼくとつ)なアイルランド訛(なま)りの英語でよくしゃべり、神経質さのかけらもない。公開中の「アサシン クリード」はゲームが原作のアクション映画。しかも主役のみならず、プロデュースも担った。シリアスな演技派から「売れ線」に振り切りました?

「いやいや、ゲーム原作だからってバカにしちゃダメだよ。この物語は、自分たちは優れた人種だから劣った人間を支配してもいいと考えるエリート集団のテンプル騎士団と、それに抵抗する者たちの対立を描いている。現代にも通じるだろう?だから興味を持ったんだ。いまのキッズはゲームを通じて歴史にハマったりするんだって。ゲームは動体視力や反射神経の訓練にもなる。何ごとも程度問題だよ。僕だってテレビを見てるとバカになると言われて育ったけど、テレビから学んだことは多いしね」

 にこやかに、しかし大マジメに返されてしまった。

●備えておけば楽しめる

 ドイツ人の父と北アイルランド出身の母との間に生まれ、アイルランドの田舎町に育った。レストランを営む両親は、俳優という道に猛反対した。

「父は大学にさえ行けばいい仕事に就けると信じてる世代だから、進学しろとうるさかった。僕たちの世代は大学出たっていい仕事なんてないのにさ」

 自力でイギリスの演劇学校に通うも鳴かず飛ばず。20代はドラマの端役やCM、バーのアルバイトで食いつなぎ、30歳になってようやく、映画「ハンガー」のハンストで獄死したIRA闘士役でブレークした。このときは5週間で20キロ減量した。

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