面談が始まると、学生たちはまず自己PR。クイズを出し、そこから「私の原点」を語り出す学生もいれば、少林寺拳法の道着姿で「なぜ体育会で少林寺なのか」をプレゼンする学生、インターンシップ(就業体験)でもらったという「特別賞」の賞状を見せながら「逆境でも諦めない」エピソードを語る学生などさまざまだ。「御社が社会にどんな影響を及ぼし、どのように社員の成長を後押ししているかお聞きしたい」と逆面接する強者までいる。

 上智大学の瀧上志帆さん(22)は面接で頻繁に「学生時代に一番頑張ったこと」を聞かれたことに違和感を覚えていた。

「一番なんて決められません。留学、アルバイト、ドキュメンタリー制作、インターン、すべて全力で頑張ってきた。逆求人の面談は1社30分。一つ一つの経験をしっかり話し、自分という人間をわかってもらいたい」

●「素の自分が出せる」

 立命館大学大学院の清田和宏さん(24)は先輩から勧められて参加した。

「普通の面接では、会社に気に入られるように、という意識がどうしても働いてしまいますが、ここでは素の自分が出せる。後日、面談した企業の方からフィードバックがもらえるので、自分のPRがどういう会社に効果的だったかもわかります」

 企業にとってこのスカウト型は、「上位校」や「理系」「体育会系」など、ターゲットを絞り込めるほか、「メジャーな就活サイト経由では出会えないような個性的、積極的な学生に会える」(大手情報・通信企業)のが魅力だ。

「ベンチャーでも、地方の優秀な学生に会える貴重なチャンスとなる」と期待するのは、映像を活用したコンサルティング会社「LOCUS」の池端威さん。昨年は、逆求人サイトで出会った地方の学生と、スカイプで面接を重ね採用までこぎつけた。

 学生全体に大きな網をかけるのではなく、最初から母集団を絞り込む方式としてもう一つ注目されているのは、「新卒紹介」だ。これは中途採用で主流だった手法の“新卒版”で、エージェントが学生と企業からそれぞれの希望やニーズを聞き取り、引き合わせる。企業は大量のエントリーから絞り込んでいく手間やコストを節約できる。

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