代わって社会の中心で活躍するのは「デジタル・ネイティブ」と言われる世代。生まれた時からインターネットに触れ、ネットを通じ「つながる」ことが当たり前の人たちのことだ。モノがあふれた時代にあって、モノに対する執着心があまりないため「所有」にこだわらない。むしろ「共有(シェア)」して、つながることに価値を見いだす。ネットを通じて、あらゆるモノがネットにつながるIoTという概念が生活の基盤となっている。もちろん、自動車への意識もこれまでとはまるで違う。

 ソニー損保が昨年11月に、今年の新成人1千人を対象に実施した調査によると、52.6%が「車は単なる移動手段としての道具」と回答。「運転を楽しむもの」(21.8%)、「家族・友人・恋人などとの時間に楽しみをもたらすもの」(22.5%)、「自己表現の手段・ステータスシンボル」(2.8%)などの回答を大きく上回った。

●「所有」減 増える「共有」

「車離れ世代」とも言われるデジタル・ネイティブにとって、車は単なる移動の手段であり、運転を楽しむものではない。加えて「所有」よりも「共有」を望む傾向が、日本以上に海外では顕著で、購買意欲は決して強くない。販売・生産台数で競ってきた自動車業界にしてみると、極めてやっかいな世代が、市場の主役に躍り出たことになる。

 それだけに業界も対応に必死だ。運転することの楽しみをアピールし続けながらも、自動運転車の開発に乗り出したり、自動料金収受システム(ETC)、道路交通情報通信システム(VICS)などと連動する車載器をつけたりと、デジタル化も進めているのが実態だ。

 ただ、決定的な意識の違いは、ここでもくっきりと表れる。例えば自動車メーカーが目指す自動運転車は、何かあった時に手動運転に切り替える機能がついていて、運転手が乗っていることが前提だ。ところがIT業界大手のグーグルは、手動運転への切り替え機能を最初から考慮しておらず、運転手がいなくても完全に自動で動く「無人自動車」の発想で自動運転車を開発している。「単なる移動の手段」という若い世代の感覚にフィットするもので、その代わりに車内にはIoT機能を搭載して車外の世界と「つながる」ことができる「コネクテッドカー」をつくっている。

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