こんな事故が起きてしまった時、未来の自動車社会ではどんな補償が考えられるのか (※写真はイメージ)
こんな事故が起きてしまった時、未来の自動車社会ではどんな補償が考えられるのか (※写真はイメージ)

 若者の車離れで“自動車王国ニッポン”の座が揺らいでいる。一方で欧米は電気と自動運転にまい進。いまやIT企業や新興勢力の参入も相次ぎ、もうバトルロイヤル状態だ。だが待ってほしい。日本には「技術」だってガラパゴスで元気な市場だってある。AERA 3月6日号「進め!電気自動車」では、そんな熱い人々にフォーカスしてみた。

 自動運転を普及させるためには解決すべき問題は多い。自動車保険もその一つだ。新たな損害賠償システムを構築しない限り、技術が進んでも自動運転市場は伸びない。

*  *  *

 ハンドルから手を離しても、よそ見をしても、居眠りをしても、クルマが勝手に運転してくれる。しかも、人が運転するより安全に。人工知能(AI)の急速な進化で、SF小説の中の絵空事だった自動運転が、技術的に現実化してきた。こうなれば次は瞬間移動できる『ドラえもん』のどこでもドアを開発するしかないか。しかし、自動運転を普及させるためにはクリアすべき社会的課題は山積している。その筆頭が、自動車保険だ。

「最近、街の板金屋さんがどんどん潰れてるんですよ。なぜだと思いますか」

 日刊自動車新聞社の野元政宏デスク(47)の問いかけに、考え込んだあげくに降参した。なんでだろう。

「車がぶつからなくなったからです」

 確かに富士重工業は昨年、衝突回避のために自動的に減速もしくは停止する「アイサイト」を搭載した車は非搭載車に比べ、車同士の追突事故で約8割減、対歩行者の事故で約5割減、全体で約6割事故が減ったと発表。トヨタ自動車も昨年末、「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」搭載車による駐車場内でのペダル踏み間違い事故が約7割減少したと発表している。

●レベル3まで現行

 これらは「レベル2」に当たる部分運転自動化。斜陽産業が増えるのは忍びないが、自動車事故が減ることは喜ばしい。自動運転のレベルが上がれば事故率は極小まで減って、自動車保険の存在意義まで問われるだろうし、最初から最後まで無人運転で済むなら運転免許も要らないではないか、と妄想は膨らむばかりだが、もちろんそんな単純な話ではない。

次のページ