若者の車離れで“自動車王国ニッポン”の座が揺らいでいる(※写真はイメージ)
若者の車離れで“自動車王国ニッポン”の座が揺らいでいる(※写真はイメージ)

 若者の車離れで“自動車王国ニッポン”の座が揺らいでいる。一方で欧米は電気と自動運転にまい進。いまやIT企業や新興勢力の参入も相次ぎ、もうバトルロイヤル状態だ。だが待ってほしい。日本には「技術」だってガラパゴスで元気な市場だってある。AERA 3月6日号「進め!電気自動車」では、そんな熱い人々にフォーカスしてみた。

 IoT時代の自動車について、浜銀総合研究所で自動車業界を担当する深尾三四郎主任研究員(35)に話を聞いた。

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 自動車業界では今、電気自動車をベースに、インターネットでつながる「コネクテッドカー」をどのように売っていくかという戦いが始まったと考えている。そのビジネスをつくるのも、買い手として支えるのも、1980年から2000年にかけて生まれ、インターネットとともに育った「ミレニアル世代」。モノで満たされた環境の中、物質的な欲よりも、つながることを重視する世代で、私もその一人。価値観が大きく変化している。モノやサービスから得られる「経験」と、そこに結びついた満足感には、お金を払う。UXの感覚だ。これを提供できるかに企業の存続がかかってくる。

 これまでの大量生産社会は、自動車の世界では終わったと思う。生産台数を増やし固定費を薄め、収益性を上げるのが大量生産の根本だが、これからは台数1台あたりの売り上げを創造することにより収益を上げるという考え方になる。車の利用者に、どれだけ課金させることができるか、というビジネスになっていく。

 例えば、LYNK&COのタッチ画面に出てくるアプリは、社外の技術やアイデアを積極的に取り込み、革新的な製品を生み出すオープン・イノベーションにしてある。また、テスラは、この部分で自動運転機能の進化を全て自前でやっている。ソフトウェアを入れ、外部からコントロールできるようにし、機能のアップデートもしてしまう。車1台が生み出す経済価値がどんどん上がり、一方で外見的なものは簡素化されていくだろう。そうすると、新車生産台数で競う話ではなくなる。

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